重度知的障害自閉症の息子に、6年以上視覚支援を行っていますが、その効果がはっきりと出た頃の話です。
絵カードや視覚支援の効果を、なかなか感じられないという声を耳にしますが、確かにそう簡単なものではありませんでした。
Contents
視覚支援を始めた頃
自閉症の息子に視覚的な支援を取り入れ始めたのは、自閉症と診断された2歳10か月の頃です。
- 目が合わない
- 言葉が出ない
- 指差しをしない
- クレーン現象がある
- いつも一人遊びをしている
これらのことが気になり、視覚支援でできることは何か、何十冊も本を読み漁りインターネットで調べ、発達支援センターの保育士さんにアドバイスをもらいました。
その頃は、情報をたくさん入れたことで保育士さんに同業者と疑われる程でした。
でも、それほど「今の息子にできることは何か?」と必死だったのかもしれません。
発達障害のある子は耳で聞いて理解し行動することがとても苦手です。
行動に移るまでのプロセス
言葉をきく→言葉の意味がわかる→記憶する→行動にうつす
息子に声を掛けだけで、行動にうつせることは極端に少なかったので、早期に視覚支援を取り入れました。
実は視覚支援は、私たちの日常の中でも多く使われています。
どこを通れば良いかを示す横断歩道や、トイレの男女マーク。
私たちは常に視覚的なものから多くの情報を得ており、それによって行動しやすくなっています。
発達障害児に言葉で伝わらないことを、まずは視覚的に伝えることで、理解しやすくなるという考え方です。
取り入れたこと
2歳の頃から家庭と通所施設で取り入れてきたことです。
- マカトン
- 手話
- 絵カード・写真カード
- スケジュール表
視覚支援の効果が出るまで
どれだけ一生懸命やっても、視覚支援の効果をはっきりと感じられるまでには、5年という長い時間がかかりました。
2、3歳の頃
手話やマカトン、絵カードを勉強し息子に見せる日々。
興味のないものに目を向けない息子は、絵カードを見せても目をそらし、手話も伝わっているのか正直不安でした。
本当に自閉症の子に視覚支援なんて効果があるの?と悩んでいた頃です。
それでも根気強く行い、息子は何度か真似をして、おいしい・ちょうだいなどの手話ができるようになりました。
ちなみにこの頃の息子は、集団での一斉指示も通りにくく、園での体操の時間に、荷物を置くロッカーが気になり集中できなかったので、先生にカーテンや仕切りで目隠ししてもらうことで、取り組みに参加することが出来るようになりました。
4、5歳
家庭や園でも、一日の予定をスケジュール表にして見せていました。
ただ見せるだけでは理解できないので、終わった予定のカードを引き抜いたり、おしまいのカードに変えることで、見通しがつくようで少し安心した様子をみせていました。
また情報量が多いと混乱してしまうので、できる限り簡潔な予定表にしたり、絵カードの背景は白で統一するなど、試行錯誤しました。
中でも、息子は絵カードのイラストよりも写真の方に興味を示していたので、小学校入学前は、写真をたくさん印刷してカードを作っていました。
6、7歳【小学1年生】
1年生になったころ、スケージュール表に随分と興味が出始め、一日の予定を指差しで一緒に確認できるようになりました。
他には、人の食べているものを取って食べてしまうことがあるので、自分の食べるものが分かるよう食事をのせる息子専用のトレーを用意したり、要らない食べ物を床に捨てることがあった時は、専用のごみ入れを手元に置くなど、その場面に合った視覚支援を行いました。
そういった支援はとても効果が大きく、困りごとが少なくなりました。
8歳【小学2年生】
切り替えが難しい息子ですが、学校の先生に「次は身体測定の時間です」と絵カードを見せられるとすぐに行動にうつせたり、今何をすべきか、写真やカードで伝えると全てのことが理解できています。
この伝え方をすることで、次第に癇癪や不安が減り、一日のスケジュールがスムーズになりました
。
6年経った今の息子ができること
家庭での視覚支援を6年以上続けてきて、息子ができるようになったことです。
手話やマカトン
おいしい・ちょうだい・お腹空いたなどの身振り手振りでのコミュニケーションの手段が10個程度可能になりました。
手話などは特別な道具が要らないので、場所を選ばずどんな時でも使うことができるメリットがあります。
絵カード・写真カード
カードを見せるとほぼ全てのことが理解でき、行動にうつすことができます。
学校や放課後等デイサービスでも、できる限り写真カードを使ってもらっているので、理解できるスピードが随分速くなりました。
単語カード用のリングやネックストラップで持ち歩くことで、外でも上手く使っています。
まとめ
視覚支援に効果が感じられない時期が長く、正直めげそうになることが何度もありました。
でも、話せない息子の気持ちが知りたい・話せなくてもカードや手話が息子のコミュニケーションツールになって欲しいという思いで、ずっと続けてきました。
視覚支援を行う際の注意点
初めから完璧な絵カードを頑張って作らないことです。
絵カードに慣れない頃はグシャグシャに壊してしまったり、紛失してしまうことがありますので、頑張って凝ったものを作ろうとせず、試作を重ねて子どもに合ったものを完成させていくことをおすすめします。
また、持ち運べるように単語カードのように束ねたり、カードケースなどを利用すると便利で出先でも使うことができます。
私も頑張りすぎず、息子の機嫌が良い時や、お互い気が向いたら行うよう意識しました。
そして得られたことは、絵カードや手話でのコミュニケーションだけでなく、声掛けの指示だけでも多くのことを理解し行動できるようになってきたことです。
カードが無くても理解できる言葉が増えてきたことは、とても大きな成長でした。
なかなか効果を感じられないといわれる視覚支援。
息子は重度の知的障害なので、はっきりと効果を感じられたのは5年程かかりましたが、子どもが見てわかるようになるまでには、ある程度の時間がかかることを知っておくことも大切だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。