叱っているのに笑っている、思ったことをそのまま言ってしまう。
自閉症の特徴の一つです。
自閉症スペクトラムの息子も、人の表情から気持ちを読むことが苦手です。
それはなぜなのか分かりやすく解説します。
そのことを周りが知っているだけで、自閉症の子の理解が深まりますね。
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自閉症児は人の表情や気持ちを読むのが苦手
私たちが普段、自然に行っている「人の表情から気持ちを読む」ということが、自閉症スペクトラム(自閉スペクトラム症)の人からすると、とても難しいスキルになります。
その特徴を3つ解説します。
表情から気持ちを想像できない
人は、赤ちゃんの頃から親の顔を観察し、表情や声のトーンを見聞きして気持ちを理解する訓練をしています。
目の合いにくい自閉症スペクトラム子は、その訓練経験が少なく、相手の表情からどのような気持ちなのか察することを苦手とします。
年齢が上がるにつれ、生活を共にする家族の表情が読み取れるようになっても、他人など顔が変わってしまうと、表情から気持ちを読み取ることがさらに難しくなってしまいます。
思ったことをそのまま言ってしまう
自閉症スペクトラムの人は、人の気持ちを読むということ以前に、自分とは違う人が、何かを思ったり感じたりしているということに考えが行きつかない面があります。
自分が起こした行動や発言で、人が喜んだり泣いたり、怒ったりすることを予想しにくく、配慮がないと思われがちです。
人への関心が薄いことと、人の心を想像できないことが原因で、思ったことを口にしてしまいます。
場合によっては相手を不快にさせてしまったり、悲しい思いにさせてしまうことがありますが、自閉症スペクトラムの人は思ったことを言っただけなのに、何故いけなかったのかが理解できず戸惑います。
ごっこ遊びが難しい
目に見えない設定を想像しながら、遊ぶことが困難です。
例えばおままごとで、自分がお母さん役で、友だちは赤ちゃん役。こうした遊びの中の設定に、人を置き換えたり想像して遊ぶことが出来ないことが多くあります。
目の前のお友達はあくまで「いつもの〇〇ちゃん」なのです。
また新聞紙を棒のように丸めてヒーローごっこをしたりすることも苦手で、新聞紙は新聞紙にしかみえません。
見立て遊びができないのはこのような脳の働きの違いがあるからです。
重度知的障害自閉症の息子の場合
自閉症の息子にも上記のような特徴が当てはまります。
- 叱られているに、声を出してケラケラと笑う
- 悲しんでいる家族の気持ちが分からない
- ごっこ遊びが全くできない
この特性は1歳半ごろから見られました。
今は少しずつ、親の表情を読んでいる様子があります。
自閉症児が人の気持ちを読むのが苦手な理由
自閉症スペクトラムの人が人の気持ちや表情を読むのが苦手な理由はなぜなのでしょうか。
「心の理論」の発達に遅れがあるから
人の表情から気持ちを読むのことに苦手があるのは【心の理論】の発達に遅れがあるからとされています。
心の理論とは、自分と他者を区別して、それぞれに気持ちがあることを認識する能力のことを指します。
一般的には4~5歳にこの心の理論が形成されますが、自閉症スペクトラムの人はその時期が遅れる傾向があります。
この発達が遅れると、人の気持ちは自分とは違うということを理解できなかったり、自分の知っていることはみんな知っていると思い込んでしまいます。
心の理論についてこんなエピソードがあります。
ある自閉症の男子中学生が、自宅の2階の自分の部屋で大音量をあげて音楽を聴いていた。
見かねた母親は、1階から「うるさい!静かにしなさい!」と叫んだ。
この男子はキレて、暴れた。
のちにこの男子に、「どうしてキレたのか」と尋ねると、
「お母さんはおかしい。うるさいのはステレオだ。僕はうるさくない」と答えた。
これがいわゆる想像力の欠如、社会性の障害である。
状況の理解が苦手
心の理論が形成されていないと、状況の理解や判断も難しくなります。
自分とは異なる立場の人がどのようにふるまうのか、どう感じるかということを想像することが困難なため、状況を理解したり空気を読んだりすることが難しいとされます。
幼いときはそれほど困ることはなくても、成長するにつれて人との接する機会が多くなると、生き辛さの原因になってしまうことがあります。
関わり方とまとめ
人の表情や気持ちを理解できない特性は、自閉症スペクトラムの人の生きていく上で最もつまづきやすいことかもしれません。
人は生涯にわたり、人と関わり生きていくからです。
心の理論は自閉症という障害があっても、関わり方次第で少しずつ形成していくことができます。
息子との関わり
息子には、大きめのリアクションをしたり、喜怒哀楽の分かりやすい表情をしたり、それらを向かい合って見せるようにしています。
- 「嬉しかったよ」と言いながら笑顔をしっかり見せる
- 叱るときは眉間にしわを寄せる
など。
視覚優位な息子にとって、表情から感情を伝えるトレーニングは、その積み重ねによって心の理論の形成に繋がると考えています。
今では泣いている人の表情を見て、心配そうに覗き込んだり、笑いかけるとニコニコしたり、怒った怖い顔をすると不安そうにしたり・・
表情から感情を読みろうとする働きが見え、それを自分の心にリンクさせようとする様子が見られるようになってきました。
幼児期には殆どなかった姿なので、息子にはこの関わり方が合っているのだと思います。
少しずつ、気持ちを読むトレーニングをすると、「嬉しい」「悲しい」などの気持ちの共有ができますね。
最後までお読みいただきありがとうございました。